NEWS&REPORT

大学にとって効果的な入試広報活動のあり方について(渡部代表の私見見解)

2021/05/30

2021530

キャンパス総研

代表取締役 渡部陽

 

 一概に入試広報といっても、個別大学の事情によって当然戦略は異なります。そもそも、広報に掛けられる予算が私立大学と国公立大学と違います。

 

大学の認知度向上という意味では、各都道府県に総合大学がある国立大学は、地域内での知名度が既にある上、授業料も私立大学に比べて安いことから経済的にも志望者増の優位性があります。エリアの問題もあります。令和2年度の総務省統計局の都道府県別大学データを見ると、東京都の私立大学数は129校もあり、2位の大阪の51校を倍以上上回る一極集中が起きています。そうなると、通学エリア内でのライバルが多く、認知度向上へ予算を割く必要があります。その点同じ私立大学でも、鳥取県や佐賀県はそれぞれ鳥取看護大学、西九州大学の一校しか私立大学がありませんから、広報手段が変わってくるはずです。また、入試広報と大学広報でも目的が変わります。こうした個々の大学事情によって入試広報は変えるべきだし、実際そうなっていると思いますが、そもそもの目的が違うという所は抑えるべきだと思います。20年以上広告業界に身を置いて来た私にとっては、まず目的を抑えることが重要だと考えます。

私立大学は受験料収入が重要な財源の一部であるので、入学しなくても受験者数を増やすということは経営戦略的には重要な役割になります。大学入試広報戦略に於いても受験者増か入学者増か目的を明確にして戦略を立てるべきです。

ちなみに広告会社を経営する立場として、このレポートで仕事を受注しようなどと邪まな考えはもっていません。むしろ注目すべきは、6年連続志願者数1位の近畿大学と高校からの総合評価首位独占の東北大学が、どちらも我々有償のエージェントを利用していないという共通点です。我々の力不足でありますが、個人的には面白いと思っています。

 私の会社では全国の大学だけでなく全てのキャンパスを手分けして回っていますが、広告会社の立場で見ると面白い広報をしていると思ったのは、2002年設立の高田馬場にある東京富士大学です。地方大学に出張に行くと、駅から遠い小規模校に車で向かうと、道中の畑や田んぼに東京富士大学の看板をよく見かけました。オープンキャンパスに行く保護者はまず見ることになりますし、地方の受験生にに認知度を上げるには、面白い広報戦略だと思いました。

 

参考資料

2020 倉元直樹宮本友弘久保沙織南紅玉 東北大学における入試広報活動の「これまで」と「これから」

2020 倉元直樹 「大学入試学」の誕生

2020 倉元直樹 東北大学工学部AO入試受験者にみる大学入試広報

 


本稿は、渡部陽が東京大学教育学部大学院大学経営政策各論の課題で提出したものを、復習後、大幅に編集したものになります。