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『架空の大学で学部入試を設計してみた。』(渡部代表の個人的試み)

2021/06/28

これまでユーキャンパスグループでは、大学生向けに専門学校や大学院の広報をした経験はありますが、高校生向けの入試広報をした経験はありません。


大学職員の経験もないが、広告業界には20年以上身を置いている私なら、どう学部入試設計をするか。

あえて、歴史もブランドも地域の優位性もなく、募集定員を満たすだけの魅力もない、架空の大学を設定し、学部入試設計にチャレンジしてみました。東北大学が成功したように、AOの定員増も段階的に増やしていかないと募集が追い付きません。選抜試験のハードルを上げても受験生の質が向上する訳でもありません。そこで、私立大学の選抜56%を超える学校推薦型入試と総合選抜型入試の受験者増に注力します。私が、この東京架空大学を近隣の私立大学と差別化するために、オリンピックで注目される競技に焦点をあて、スポーツ推薦から取り組みます。


1.     学部入試を設計する架空大学のプロフィール



2.     スポーツ推薦を戦略にする背景

旺文社の調査によると、全国で約37%もの大学がスポーツ推薦を行っています。

(学校推薦型選抜だけでなく総合型選抜も含む)

アドミッションポリシーの三つの要素をどう解釈しているのか、専門外の私には予想でしかありませんが、知識・技能の技能の部分や、スポーツを通じた思考力・判断力・表現力、スポーツを通じた主体性という事なのか。「学力の三要素」と考えると体育大学でもない東京架空大学にスポーツ推薦を推すことには若干の抵抗はありますが、学校推薦ではなく総合型選抜に注力して、東京架空大学の入試選抜を設計しようと思います。

大学入試の主体は大学であり、多面的総合的に評価するのだから、ここは若干の後ろめたさもあるのは認めつつ、東京架空大学の生き残りを掛けてスポーツ推薦で入学者を確保する戦略に行きたいと思います。

 

3.   スポーツ推薦の現状と特徴

 東京架空大学の差別化のため、野球、サッカー、ラグビー、バレーボール等他校でも募集の多いスポーツは、試合や大会でも競合が多く実績が出しづらいと判断し、あえてそれ以外の競技で、かつ東京2020をきっかけに注目がされやすいオリンピック種目にスポーツ推薦の対象とする競技種目を絞ります。

東京2020オリンピックの種目は全部で50種目あります。人気種目には偏りがありますが、例えば、埼玉の東京国際大学は、公募制スポーツ推薦入試を「オリンピック競技種目」という募集形態にしていたり、西九州大学もスポーツ特別推薦の枠の中に「パラスポーツ全種目」という募集形態にしていたりと、オリンピック種目は推薦枠の競技に全て入りうることが分かります。

 

但し、東京架空大学のスポーツ推薦にあたり同レベルの大学を参考に、歩留率を見なければなりません。これらは、出願要件の中に、合格した際の入学を確約できる者というのを条件に入れるなど、戦略的に歩留率を上げる工夫が必要です。

 

.     東京架空大学の学部入試設計(まとめ)

 

l  入試センター組織構成:一定の専門性が必要なため、アドミッションセンター、高等学校教員経験者で、部活の顧問経験のあるメンバーで構成。

l  組織運営法:大学という組織は急に変えることが非常に難しいため、一般選抜は基本的に動かさないという姿勢で教授会を納得させつつ、委員会組織が学校推薦型と総合型でスポーツ推薦による入学者確保を徐々に説得していくボトムアップ型の学内広報をします。

l  採用:単にスポーツ推薦をしても該当スポーツの指導者がいないと志望のきっかけになりません。野球やサッカー等高額な採用費用が掛かるスポーツは避けているので、各種目内では知名度や実績のあるコーチや監督を雇います。この部分には予算は掛けますが、以下の費用面で調整します。

l  広報:

高校訪問:スポーツ推薦を始めたことをアナウンスする訳ではなく、実績ある監督コーチを招いたことを説明するため、該当する部活の顧問への訪問もして、熱意を伝えるどぶ板営業をします。体育会は後輩への繋がりも太いので、監督やコーチの人脈もフル活用します。

高校の先生向け入試説明会:東京架空大学を志望するレベルの高校であれば、早期に合格者を確定させることもメリットになるはずなので、たとえスポーツが志望のきっかけだとしても総合選抜は、第一志望者のための特別な機会であることを強調します。

進学説明会・相談会:業者を使わず、費用を抑えて監督コーチの採用費用に充当

オープンキャンパス:東京架空大学はブランド力がないので、高校訪問で接点を作った部活の顧問にも高校生の参加を促し、運動会のような企画で東京架大学に受験する学生同士の交流の場を設けます。 

l  入試スケジュール:

総合型選抜 7月に受付開始12月までに発表し、総合型選抜で落ちた学生が一般受験をするポジションを目指す

学校推薦型選抜 111日募集開始、12月までに合格発表

一般選抜 1月出願受付。すぐには変えられないので、歩留率等も年度ごとに目標を決めて、ブランド力を作り、段階的に歩留率を上げる。

l  ターゲットエリア 東京架空大学は、周辺に私立大学も多いので、首都圏に絞る。都内以外は、招聘した監督やコーチの人脈のある高校に絞る

l  費用:体育会の底上げの為、指導者だけでなく、機材等も費用が掛かる可能性がある。監督やコーチから部活の底上げとスポーツ推薦を理由にOB会組織を強化してもらい、OB会費を部活の運営費に充て、入学者確保の学部入試のために新たな費用が大きく発生しないような仕組みを作り、学内広報においても反対派の同意を得られるようにします。

 

 以上

参考資料

2021 旺文社螢雪時代5月号

2020 倉元直樹 大学入試センター試験から大学入学共通テストへ

2020 倉元直樹 『大学入試学の誕生』

2020 倉元直樹 『大学入試センター試験から大学入学共通テストへ』

 

本稿は、渡部陽が東京大学教育学部大学院大学経営政策各論の課題で提出したものを、復習後、大幅に編集したものになります。