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コラム「タイパ至上主義の嘘。100キロハイクに熱狂する令和の大学生たち」

2026/08/14

 30年以上大学マーケットに携わっていますが、最近、街で大学生の大群を見ることがめっきり減りました。かつて4月・5月の新宿や渋谷、池袋は、サークル名を書いた看板を持った大学生が新入生を引き連れ、ごった返していました。1980年代まで新宿・東口にあった噴水は、早慶戦の後に大学生の大群がダイブするため「ダイブ噴水」と呼ばれていたほどです。

「最近の大学生はおとなしくなった」――そう思っていたところに、驚くべきニュースが飛び込んできました。5月23日・24日に行われた「本庄~早稲田100キロハイク(通称:100ハイ)」の参加者が、なんとコロナ以降最多の1,300人を超えたというのです。まさに大群です。

100ハイとは、早稲田大学生を中心とした参加者が、埼玉の本庄から早稲田までの約100キロをひたすら歩くイベントで、「早慶戦」「学園祭」と並ぶ早稲田三大イベントの一つ。令和の大学生が、なぜ風呂にも入らず夜通し歩き続けるのか。その熱量の正体を知りたくて、私は「第63回本庄~早稲田100キロハイク実行委員長」を取材しました。
曰く、63回も続けてきた伝統行事であることも近年の参加者増加の要因の一つであるとのこと。

サークルの威信をかけて最速でのゴールを目指す団体もあれば、50Lの水を参加者に配りながら歩く「脳筋営業縛り」、下着1枚でスタートし、靴や服などの装備を参加者からもらっていく「キャラメイク縛り」など、独自の挑み方が伝統の一つとなっています。「100ハイマジック」なる言葉もあり、100ハイをきっかけにカップルが誕生することもあるのだとか。

3月まで高校生だった若者が、早稲田大学に入学してわずか2か月で頭に「W」だけを残して丸刈りにしたり、下着1枚で街を闊歩する…。早稲田大学に合格して安堵した保護者からすれば、驚愕でしょう。「いじめられているのでは」と心配した親御さんもいたそうです。

しかし彼らは、親が用意した旅行プランに参加しているのではありません。100キロハイクという途方もない挑戦を、自ら選び、自ら楽しむ。タイパ重視の時代に、風呂にも入らず、眠気と戦いながら仲間と歩き続ける。なんとも痛快ではありませんか。
私の世代だと、こうした独特な伝統が、「SNS映え」して参加者増に繋がった…などと着地させてしまいがちですが、実行委員長は、参加費用を安くしたことが、参加者増の最大の要因だと断言したのです。

これまで1人8,000円だった参加費を、2026年は学生・大学院生を6,000円に値下げし、一般を10,000円に設定。お弁当の支給、リタイアした人のための車の手配、休憩所の場所代や保険料など、コストが嵩む中で、協賛企業を募るなどして「2,000円の値下げ」を死守したのです。

我々社会人からすると、8,000円と6,000円の違いは見えづらいかもしれません。しかし実行委員長は、「飲み会1回2,500円で、2日飲めば5,000円。交通費を入れれば6,000円くらい使う。それなら100ハイで2日間思い出を作っても同じ値段です」と説明してくれました。非常に分かりやすい。
さらに、実行委員の方からエナジードリンクメーカーに物品協賛を依頼しておきながら、クライアントの要望であったスタート地点のロゴ入りアーケードは断ったそうです。あくまで学生主体のイベントとして、極力企業色を出さないように交渉もしています。実に逞しい。 少しでもクライアントの要望をかなえようと日々を過ごしている我々広告代理店にとっては耳の痛い話ですが、イベントの趣旨をクライアントに理解してもらうことも仕事なのだと、早稲田魂を持った学生から学びました。